Profile

ピアノ人生で
大切にしてきたこと。

────── 目次 ─────

◆公式プロフィール
◆Profile (English)
◆裏プロフィール

公式プロフィール

鐵百合奈(てつ ゆりな):ピアニスト
2019年、N&FよりデビューCD「シューマン:ピアノ・ソナタ3番 ブラームス:左手のためのシャコンヌ」をリリース。「レコード芸術」で準特選盤、毎日新聞で特薦盤となる。2021年には2枚目のCD「シューマン:ピアノ・ソナタ2番,1番」が、「レコード芸術」で準特選盤、毎日新聞で特薦盤、「音楽現代」などで推薦盤となる。
2019年からベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏シリーズを「美竹清花さろん(現・渋谷美竹サロン)」で開催、NHKからドキュメンタリーが放映される。並行してソナタ全曲録音を行い、2022年3月に《ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲集上巻》(CD5枚組)が発売、2023年3月に同下巻が発売され、上下巻ともに「レコード芸術」で特選盤となる。
多くのリサイタルを開くほか、読売日本交響楽団、東京交響楽団、広島交響楽団などオーケストラとの共演も多い。三井住友海上文化財団の派遣アーティストとしても全国各地で演奏活動を行っている。
第86回日本音楽コンクール第2位、岩谷賞(聴衆賞)、三宅賞。第4回高松国際ピアノコンクール審議員特別賞。第20回日本クラシック音楽コンクール高校の部第1位、グランプリ。第11回大阪国際音楽コンクール、第14回ローゼンストック国際ピアノコンクール、各第1位。 2015年、皇居内桃華楽堂において御前演奏を行う。2017年度香川県文化芸術新人賞。
ヤマハ音楽振興会、よんでん文化振興財団、岩谷時子 Foundation for Youth、宗次エンジェル基金より、奨学金の助成を受ける。
学術面では、論文「『ソナタ形式』からの解放」で第4回柴田南雄音楽評論賞(本賞)を受賞、翌年「演奏の復権:『分析』から音楽を取り戻す」で第5回同本賞を連続受賞。東京藝術大学附属音楽高等学校、同大、同修士課程、同博士後期課程を修了、論文「演奏解釈の流行と盛衰、繰り返される『読み直し』:18世紀から現在に至るベートーヴェン受容の変遷を踏まえて」で博士号を取得。
2020~2023年、桐朋学園大学院大学専任講師。

Yurina Tetsu (Piano)
Prolific performing and recording artist, Yurina Tetsu has garnered constant accolades throughout her career. Her 2019 debut album, Schumann Piano Sonata No. 3 and Bach-Brahms Chaconne for the Left Hand was named a Special Selection Disc by Record Geijutsu (“Record Arts”) and Mainichi Newspaper, and her following album released in 2021, featuring the First and Second Schumann Piano Sonatas, was awarded the same distinction by multiple notable music publications.
2019 also marked the beginning of her endeavor in performing the complete Beethoven Piano Sonatas at the Mitake Sayaka Salon, and this project was documented and broadcast by NHK. Her first five-disc volume of the Sonatas became available in March 2022 and, once again, the recordings were designated as Special Selection Discs by Record Geijutsu.
In addition to her extensive recital engagements, Dr. Tetsu regularly appears as a soloist with the Yomiuri Nippon Symphony Orchestra, Tokyo Symphony Orchestra, and Hiroshima Symphony Orchestra among others, and performs as a selected artist for the Mitsui Sumitomo Insurance Cultural Foundation. She earned top prizes, as well as jury discretionary awards and audience prizes from various international piano competitions, including the 86th Music Competition of Japan, the 4th Takamatsu International Piano Competition, the 11th Osaka International Music Competition, the 20th Japan Classical Music Competition, and the 14th Rosenstock International Piano Competition. She was also given the honor of performing for the Imperial Family of Japan at their palace in 2015.
As a scholarship recipient from the Yamaha Music Foundation, Yonden Cultural Foundation, Iwatani Tokiko Foundation for Youth, and the Munetsugu Angel Fund, she completed her pre-college, undergraduate, and graduate degrees at the Tokyo University of the Arts. She earned her Doctorate in Music with her dissertation, “The Rise and Fall of Interpretive Trends and Recurrent ‘Re-readings’: Changes in the Reception of Beethoven from the Eighteenth Century to the Present.” Her scholarly work has been awarded the Minao Shibata Memorial Award for Musical Criticism for two consecutive years for her theses titled, “Emancipation from Sonata Form,” and, “Reinstatement of Performance: Retrieving Music from Analyses.”
Dr. Tetsu was appointed as a full-time Lecturer at the Toho Gakuen Graduate School in 2020.

裏プロフィール

幼少期:「ピアニストになりたい」

 香川県に生まれて、4歳で習い事の一環としてピアノを習い始めました。両親は音楽と縁がなくて、とくに父が音痴だったため、母は「カラオケで恥ずかしい思いをしないように…」とピアノを習わせたそうです。最初の先生は声楽科で、歌とピアノを教えてくれ、私が初めて出たコンクールもピアノではなく歌でしたが、やがてピアノが大好きになり、幼稚園の七夕の短冊には「ピアニストになりたい」と書いていました。

小学校低学年:頑張りたいのに「練習の仕方が分からない」

 体が小柄なわりに手はがっしりしているという体格(手)に恵まれて、毎日楽しく弾いていただけの小学2年生の時に、県のコンクールで金賞1位をとりました。さらに小学3年生の時に、地元では小学生以上で初めて全国大会に進出し、初めての東京ディズニーランドを楽しみにウキウキで上京したら、全国大会のシリアスな雰囲気に圧倒され、初めて本番で緊張し、本番で練習よりうまく弾けないという経験をしました(これまでは本番が一番上手に弾けていたのに…)。悔しさから、「もっと練習しなきゃだめだ、頑張らなきゃ」と思うものの、練習の仕方が分からない…と悩みます。

小学校高学年:「こうやって頑張ればいいんだ!」

 小学4年生の頃から、東京から月に一度香川県に教えに来てくれる先生に師事し始め、チェルニー、シンフォニアをはじめとした基礎を習って、この時やっと自宅での「練習方法」を教わりました。「部分練習」「リズム練習」を習い、「指番号を考える」という行程を知り、「体重移動」といった体の使い方を教わりました。この頃はまだ、音楽表現と指の練習を切り離して考えていたので、指の練習はつまらなくて、練習が辛いと思うことが時々ありました。でも、練習曲や課題として与えられた曲を次々にクリアしていく快感と、「チェルニー全部終わったらショパンの《革命》を弾いていいよ」というご褒美に釣られ、休日返上で練習に励む日々を送ります。やっと弾くことを許されたショパンエチュード「革命」を含むプログラムで受けたコンクール(中学1年生)で、全国大会で銀賞(2位)をとり、念願の全国大会リベンジを果たしました!この頃から、進学先として「芸高(東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校)」を意識し始めます。

中学生:本番で緊張、暗譜がトラウマに…どうなる受験!?

 中学2年生で師事する先生を変わり、東京に飛行機でレッスンに通いました。ここで、ピアノ椅子の座り方、椅子の高さなど「姿勢」を徹底的に変え、「重力奏法」など、腕や背中など体全部を思いっきり使って大きな音を出す方向に急転換! 選曲も大幅に変わり、リストのパワー系の曲に初めて取り組みます。弾き方の大改革を行った影響もあり、この年(中学2年生)のときの全国大会で、1ページほどワープする暗譜ミスを初めてやらかします…! 以降、暗譜の恐怖に苛まれ、本番前に吐き気を催し、本番中に大量の手汗や手指の震えが止まらないほど緊張するようになってしまいます…。見かねた先生の勧めにより、楽曲分析によって構造的に曲を理解し、多角的に暗譜することで不安を解消していく方向で努力しました。この頃から、楽曲分析をレッスンの補助的に(演奏表現のためにも)行うようにもなり、楽曲分析を演奏表現に結び付けやすいベートーヴェンのピアノ・ソナタに惚れ込みます。本番への恐怖は克服できないものの、芸高の入試曲の半分は大好きなベートーヴェンのソナタだったので、無心でひたすら邁進して芸高に合格しました!

高校:手のフォームの大転換!

 芸高ではレッスンは規定の回数しかなくて、やはり「自分で練習する力」が必要でした。先生は「卒業したら、自分で練習するほかないんだよ」と、自立を重視した教え方をされました。たとえば、レッスンの最初に「予習してきた事」や、「練習の中での問題点」などの報告を求められたり…。また、地方に育った私は手っ取り早く曲を仕上げる手段として、プロのピアニストのCD演奏のコピーを行っていたのですが、先生は当面の間その行為を禁止して、かわりに「生の演奏会に行きなさい」と言いました。また、中学の頃から指摘されていた手のフォームを徹底的に指導されました。このように、曲の仕上げ方と、手のフォーム両方の大転換を行ったため、またもやコンクールでは結果が出ず歯がゆい思いをしましたが、高校3年生のときに受験曲として選んだブラームスのパガニーニ変奏曲やショパンエチュードOp.10-2が大当たりで、複数のコンクールで全国1位の成績を収めました!! これらの曲は手のフォームを改善しなければ弾けなかったと思います。

大学~大学院:コンクールとCDデビュー、指導経験について

 芸大では積極的にコンクールに出る傍ら、学費や講習会の受講費捻出のため(高校2年生の時に父が急逝しているので…)、芸高受験を希望する中学生の楽典・聴音・ソルフェージュ指導と、恩師の生徒さんのレッスン(いわゆる下見レッスン)を多数行ってきました。修士在籍中に日本音楽コンクール2位や、国際コンクール入賞など、演奏の結果も出すことができました。演奏に真剣に向き合うなかで、音楽学との両立に興味を持ち、博士後期課程に進学しました。
 大学院(修士、博士後期課程)では、修論・博論の他に、「演奏と分析」の関係を論じた論文を二本寄稿し、ありがたいことにどちらも評論賞を受賞することができました。中学生の頃から意識し始めた「分析を演奏に生かすには?」の問いを軸として、「聴衆」との関係も組み込みつつ、「演奏現場」に即した研究を現在も続けています。博士後期課程に在籍中の2019年、N&FよりCDデビューしました(収録曲はシューマンのピアノ・ソナタ第3番とブラームスの左手のためのシャコンヌ)。同年から、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズ(全8回、2019年~2022年)を企画、完遂しました! この演奏会と平行して「鐵百合奈 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」の録音も行い、2022年に上巻CD5枚組、2023年に下巻CD5枚組(計10枚!!ボリュームよ!笑)が発売、どちらもレコード芸術「特薦盤」に選ばれます!その合間に(?)、シューマンのピアノ・ソナタも全曲収録し、二枚目のCDを2020年に出しています(収録曲は2番と1番です)。
 同じく博士後期課程に在籍中、2020年4月より2023年まで、桐朋学園大学院大学で専任講師として大学院生(修士)の実技指導にあたり、さらに座学の講義(伴奏実技演習)や論文指導も担当しました。また、個人個人の「『学生』を卒業して、これから…」の相談にも乗ってきました。
 現在は、音大受験生や、大学生、院生、大人の方のレッスンを行っています。皆さんの整体師のような存在になれるよう、心と体のメンテナンスをお手伝いをするイメージで教室を運営しております。